同居人は女社長
エリンの様子がおかしいことにレッドはすぐに気付いて、どうしたのかと尋ねると、エリンはリガオンからきいた情報や今の会社の状況を説明した。


「そこまでわかってるのに・・・なんで?」



「証拠が何もないのよ。盗作されたわけでもないし、会社内のスパイ行為なんてどこの企業でもあることなの。
でも、彼女の罠はとても巧妙で・・・何も証拠がないの。

逮捕された人たちだって、結局自分たちが悪いことをしたんだから・・・っていう意識しかないの。
本人はすました顔しているのに、どういうルートでどんな人間がきているのかもわからない。

契約社員や派遣社員をチェックするにしても証拠がなければおさえられない。」



「そうか・・・そんなことが。
ずいぶん、たくさんの人がいなくなったと思ったが・・・役員が逮捕か。
それもドネリティの方が本命だったとは。

あれ・・・ってことは、かわいいものをぶっつぶすのが狙いなら、ドネリティのデザイナーが店を出すっていうのはすごく気になるんじゃないのか?」



「そうなの。だからあえて挑戦を受けるために別会社を作ったのよ。
デザイナーが私自身なんだから、気に入らなければ私を殺すしかないわ。

たぶんそうならないように、引き抜きにくるか、自分の会社をお得意様にするように依頼してくるはずよ。
利益を逆どりしてやるわ。」


「へぇ・・・そりゃ、なかなか面白いな。
それで、俺とラングか。

だけど、女ってこええ・・・。」



「嫌ならドネリティの営業に入ってもらえばいいわ。
べつにレッドに手伝ってもらわなくたっていいもの。」


「そんなこたぁ言ってないだろ。
リガオンと内情について話してたのは、あんまし面白くないけど、エリンの会社に呼んでくれたのはほんとにうれしかったし・・・。

今の話きいたら、気に入らなければ殺しに来るかもしれないだろ。
俺はそんなことは絶対させない。」



「ほんとっ!レッドがそういってくれたら、百人力な気がするよ。」



「はぁ・・・(嫌なこと言うかと思ったら、かわいいこと言うんだもんなぁ。
これだから俺は休日をとったんだよな。)」


レッドはエリンの腕をグイッとひっぱると、エリンの唇にチュッとキスをした。


「えっ・・・うっ」


「偶然だけど社員の仇が同じ島にいるんだ。
おやすみのキスも終わったから早く寝ろよ。」


「う、うん・・・。」


自分のベッドに倒れこんだエリンは自分の唇を右手で押さえながら、考え込んでいた。

(おやすみのキスだって言ったよね。ただ、それだけよね・・・でも、家ではそんなことしたことないのに。)
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