同居人は女社長
ひとの休日をいきなり気分の悪い材料を並べて説教を始めるだとぉ!なんてヤツなんだ!


俺は彼女に怒った顔を見られたくなかったせいもあって、背中を向けたまま不機嫌な声を発した。


「たとえ、そうであってもだ。俺の立場じゃどうしようもない。
俺は雇われの身だし、やばくなれば逃げ出せばいいだろ。」


「そうですね・・・沈みかけた船からは逃げればいいんでしょうけど・・・あなたは営業部長だとききました。
もしかしたらですけど・・・もしかしたら・・・悪いことしている人からあなたは狙われてるかもしれません。」


「はぁ?」



「いきなりでごめんなさい。会って親しくもない女から突然こんなこといわれて気分を害するのは当たり前ですよね。
私・・・はそういうパターンで追い出された人を何回か見てきたので、気になってしまって・・・。
自分の会社の人はあまり信用できないから、自分で見たものや聞いたもの、触ったものだけを信じて仕事をしています。

だけど、メイタス家の皆さんは信用のおける人たちばかりだから、巻き込まれてほしくなくて。」



「おいおい、ドネリティ社って恐ろしい人間をたくさん雇っているみたいだな。
で、あんたは社長なんだろ?
何も手をうたないで、見てきただけなのか?

うちはな、もっとチームワークのある会社だぞ。
そりゃ、おたくに比べれば華やかさには欠けるけど、堅実にやってきてるんだ。
しかも、仲間を疑ったりしない。」



「仲間ですか・・・裏切られても同じことが言えますか?」



「裏切るヤツなんかいないよ。
経理上計算を間違ってるか、悪いヤツが黙ってるんだろ。」



「悪いヤツがいたとしてどのくらいのお金まで我慢できますか?
私がざっと計算した感じでは、今年で300億は超えているはずですけど・・・。」



「なっ・・・ウソだろ。そんなに!」


「私があなたに嘘をついてもメリットはありません。
いっそのことつぶれてくれた方が助かりますもの。」


「うげっ・・・言いたいことをいうんだな。
で、俺はどうしたらいいんだ?」


「犯人を捜すか、それがダメでも、あなたが犯人にならないでとしか・・・いえないです。」


「俺が犯人になることもありうる・・・と言いたいんだな。」


「ええ、でなきゃ、会社の規模的に、営業部長が休日をのんびりとっているなんて考えられないと思って。」


「大きなお世話だ・・・。けど・・・情報ありがとう。
あのさ、1つきいてもいいかな。」



「何ですか?」


「うちの会社は君の会社では救えないのか?」


「買収とかですか?・・・残念ながら、不明金が大きすぎて無理です。
業績が正当に悪ければ別ですが・・・事件がらみとなれば、買収する側の方が見返りは何かと問われます。
それに、あなたの会社じゃないし。」

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