同居人は女社長
レッドからの電話をきってから、クリーブはエリンの寝室へ行ったがエリンの姿が部屋から消えていた。

クリーブは慌ててエリンを捜しはじめると、メイドと庭師が場所を案内した。


「だんなさま、あちらで何やらスケッチしておられます。」


「手間をとらせて悪かった。ありがとう。」


「いえいえ、いつでも御用の際は言いつけてくだせえ。」



クリーブはエリンが熱心に紙に何かを描いているようだったので、そっと近づいて後ろからのぞいてみた。


「これは見事だな。君にかかれば雑草もとてもきれいな模様になるんだな。」


「あっ・・・クリーブ、もしかしたら私を捜してくださったんですか。
すみません、大きな庭を見ていたら急に描きたくなって、メイドに紙と鉛筆を用意してもらって庭師のおじさんにお庭を案内してもらったんです。」


「べつに気にしなくていいよ。
無駄に広い邸だし、ちゃんと行く先を知っている者がいたんだからね。

で、描いてみて何か思い出したかな?」


「私・・・こんなふうに、ふと思ったことをスケッチブックや手帳に描いていたと思うんです。
だけど、それから何をしてたのかが、まだわからなくて。

それと、そろそろお夕飯ですよね。
ご飯作るのをお手伝いしなきゃ!」


「いいんだよ、ここでは・・・シェフが全部用意してくれる。

あっ・・・もしかして君は夕飯を手作りしていたのかな?
私がメインで作ることってめったになかったと思うんです。

でも、お手伝いはいつもできるときにはしていた・・・と思うんです。」


「へえ・・・じゃあ深夜に僕と夜食を作ってみようか。」


「えっ?クリーブはお料理できるの?」


「バカにしてるなぁ。
僕は馬番から料理、洗濯、炊事、大工仕事に庭師までいろいろできるんだからね。」


「すごぉ~~い。
こんな大きなお邸にいて、映画会社の社長なのに何でもできちゃうなんて!

あれ・・・そんなにできてお金持ちだったらこのお邸なんて女性でごったがえしているんじゃ?」



「あははは、妙な気は遣うんだな。
ここにはたぶん来ないと思うよ。

ここを知ってるのは男だけ。」


「えっ、ま、まさか、まさかクリーブは男性の方が・・・」


「ぷっ!ぶあははははっは、もう、エリンは面白いこというなぁ。
ごめんごめん、僕の説明の仕方が悪かった。

ここの邸はね、一部の仲良しの男しか教えてないんだ。
それも仕事で一段落したときしか、利用してないしね。」


「じゃあ、恋人も?」


「今のところ恋人と固定した女性はいないよ。
結婚したことはあるけど・・・すぐに離婚してね。

僕は結婚には不向きみたいだ。」


「うわっ、なんかもったいないですね。
家事全部してもらえるのに・・・。」


「ぷぷっ・・・つっこむのはそこ?あははははは。」


「なんでそんなに笑うんですか?」


「いや、君の感性は最高だよ。」
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