同居人は女社長

クリーブは仕事の電話だとエリンに嘘をついて、レッドに電話をした。


「レッドか？
ちょっとたずねるが・・・君はエリンと同居しているのかい？」


「ああ。正確には、うちの家族みんなの家にエリンが下宿しているというのが正しいんだがな。」


「下宿だって？
彼女は社長なんだろ？」


「ご両親が亡くなって社長を継いだけど、街でひとりで泣いていたんだ。
そこで、うちの親が拾ってきたってわけだ。

俺が実家へもどったら、ライバル会社の社長が下宿してたんだからびっくりしたよ。」


「そっか・・・そういうことなのか。」



「あんちゃん、それがどうしたんだ？
もしかしてエリンが思い出したのか？

俺のことを思い出したのか？」


「いや、会話中に、自分で描いたエスニックな模様を見て、こんな柄の大皿をテーブルの真ん中に置くとレッドがよろこぶって・・・言ったんだが、レッドって誰だっけ？って・・ね。」



「そっか・・・。だけど、うれしいなぁ。
エスニックな柄の皿で好きなおかずをどっさり盛られるのが、俺大好きだから、それを思い出してくれたきっかけになったなら・・・いい傾向だ。

あんちゃん、もうそろそろ仕事が入ってきてるんだろ？
しんどくなる前に言ってくれよ。
俺がすぐにそっちにいくからさ。」



「大丈夫だ。まだ台本も完成していないから、材料を集めているだけだしな。
僕が仕事をしている間に、絵を描いたりしてる。

それに夕飯を作るのも手伝ってくれてる。」



「そ、そうなのか・・・早く思い出してくれればいいんだけどな。
こっちもいろいろと仕事が忙しくて、エリンが教えてくれないとつらいとこだ。

もう少しあんちゃんに彼女のこと、頼んでてもいいか？」



「ああ、俺は助かってるくらいだ、安心しろ。
じゃ、そろそろ仕事の電話があるから、またな。」


「うん、クリーブ・・・エリンのことよろしく頼む。」



（すまない、レッド。僕は彼女を離せそうにない・・・。
いっそのこと何も思い出さなければいいのにって最近は思ってるさ。

それにエリンを会社に復帰させたら、妹に狙われる・・・それだけは阻止したいんだが。）