同居人は女社長
夕方、クリーブのところに秘書らしい人物が2人やってきた。

ひとりは40過ぎくらいの男性でもうひとりはクリーブと同じくらいの30代だ。


クリーブはシェフに客2人分の夕食の追加を知らせていた。
するとエリンがクリーブに言葉をかけた。


「クリーブ・・・私もお手伝いしましょうか。
急なお客様でしょう?」


「ああ、でもうちの会社の社員だから、そんなに気を遣わなくてもいいよ。
じゃ、先にお茶の用意だけでも・・・」



「君は客の前に出てこなくていい!
メイドがしてくれる。

ごめん、僕は怒っているわけじゃないんだ。
君の記憶がないのに他人に会わせる勇気がないだけだ。」


「ご、ごめんなさい。
そ、そうよね。お茶をお出ししているときに変なことを思い出して、こぼしたりしたらいけないですもんね。
わかりました。

夜は部屋で読書でもしています。」


「悪いね・・・あ、僕の書斎に並んでる本で気に入ったのがあれば、見ていいからね。」


「はい。」



クリーブは秘書2人と話をした。

「リエッタはラングリオにべったりなのかい?」


「はい、何か手違いで人物を間違えたとかいってましたが、今はラングリオにくっついて食器業界にさぐりをいれているようですな。」


「エリンティア嬢はまだ見つからないらしいですが・・・もしや、この邸にいるのでは?」


「どうしてそう思う?」


「いや、社長の感じがかなり変わりましたのでね。
仕事について聡明なのは、いつも通りですが、印象がかなりおだやかでここでの応対も和やかなものだから。」


「ムッ・・・」


「図星ですかな。でも、食器業界のことは社長とは無関係でしょうし、何かあったんですか?」


「君たちには嘘はつきとおせないね。
今から話すことは、しばらく内密にしておいてほしいんだが・・・エリンはリエッタの部下によって記憶をなくすほどの毒をもられたんだ。」



「なんと!・・・ということは記憶がないのですね。」


「そうだ、そしてここへトラックで運び込まれてきたんだ。」


「リエッタ様は何をお考えなのやら。」


「嫌いな物はみんなうちに来るのかもしれないが・・・でも記憶がもどらないのに、リエッタの攻撃を確実にあびるところにはもどしたくはないんだ。

だから、ここで養生させながら様子を見ているところだ。」


「で・・・エリン様が気に入ってしまったわけですな。」


「うるさい。おまえたちもあの娘とあえば、気に入らないわけがない。」


「ほぉ・・・では会ってみたいものですね。」


「いや、だから・・・その・・・くそっ、待っていろ。
部屋にいるはずだから、呼んでくる。」


クスクス笑う秘書たちを後にムッとした顔のクリーブがエリンを呼びにいった。
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