同居人は女社長

赤い顔をして自分の部屋にやってきたクリーブを見て、エリンは驚いたが秘書たちが呼んでいるときいて、エリンは身を正して２人の前で挨拶をした。


「はじめまして、エリンです。
もうクリーブから私の記憶喪失の話はご存じでしょうけど、私は名前以外のことはまだ何も思い出せませんので、きちんとした自己紹介もできないのですが、もし、私の手がかりをご存じならお教えください。」


「おぉ、あなたがエリンさんか。
こりゃ、社長が隠しておきたくなるわけだ。あははは。」


「えっ・・・？」


「そうですよ、我々はふだんから女優たちも多く接触していますから、目はけっこうこえてるつもりでいますが、あなたは小柄ながら上品で凛としていらっしゃる。」


「あ・・・の・・・私は。」


「おい、エリンを困らせるな。
いろいろ思い出さなきゃいけないことがあって、不安なんだ。
ジョークといえども、困惑させるようなことは言わないでくれ！」


「失礼しました。しかし我々も最近の社長が休暇を延長するといってみたり、庭の手入れをしなければ・・・とかキッチンでの仕事が忙しいとか・・・不可解で疑問があって突然、今日押しかけてしまった次第でね。」


「まさか、クリーブ社長自ら、庭の手入れから料理までやっておられるなんてびっくりでした。
でも、あなたの顔を見たらそれも簡単に理解できましたけどね。」


「おい！もういいだろう。エリンが困っている。
悪いな・・・言いたい放題の部下で。」


「いいえ・・・でも私はここではお荷物ですから。
何とかお役にたちたいと思ったんです・・・けど・・・クリーブは何でもしてくれるのでいつも私はお手伝い程度しかできなくて。

早く、記憶を取り戻さなきゃいけないのに。」



「いえいえ、あせることはありません。
私たちは今日ここにおじゃまさせていただいて、正直うれしいんですよ。
社長は仕事を熱心にされると食事も入浴も忘れて没頭されてしまう人なので、あなたのような方がおられた方が人間にもどってくれた気がしてね。」


「食事も入浴も忘れて？そんなにお仕事を？」


「おい、もういいだろ。
エリンはまだ不安なんだ。勝手なことを言わないでくれ。」



「わ、わかりました！すみません。
つい、あなたの事情を考えもせずに・・・。」


「いえ、私はここで居候させてもらってるだけですし、自分が本当はどこのエリンかもわからないなんてほんとに困りものですよね。

クリーブがいい人でよかったと思ってます。」


「エリン・・・。」