同居人は女社長
結局、マルティリオの店でほぼ1日を費やしてしまった2人だった。


「身内はつい長くなっちまうな・・・」


「でも有意義だったわ。」


「まぁ、1件でも実用的な店で使ってもらえれば、それがいちばん宣伝になるしな。
さてと・・・買い物して帰らないとな。」


「今日は私が全部作るわ。」


「おぃ・・・まだ無理するなよ。」


「もう大丈夫だから。それにマルティにお惣菜を分けてもらってるし、1品作ればいいディナーだわ。」


「言いだしたらきかねぇんだからなぁ。
まぁそれだけ元気があれば、いいけどなぁ。」



夕食後、レッドがコーヒーを飲みながら、マルティリオからの注文リストの確認をしていると、ガタンと音がした。

そっとレッドが隣の部屋をのぞくと、ベッドの前でエリンが頭を押さえて床の上でうずくまっていた。


「エリン、どうした?」


「めまいがして・・・寒気がする。」


「さ、早くベッドに横になって。
めまいと寒気だけ?気持ち悪くないか?」


「うん、しばらく何もなかったのに・・・うぅ寒い・・・。」


「顔色が悪いな・・・俺、医者を呼んでくるよ。」


「行かないで、レッド・・・ここにいて。」


「弱ったな。しばらく様子を見るけど、症状がひどくなりそうだったら医者にかからないと。」


「レッド、くっついてもいい?寒いの。」


「えっ、あ・・・うん。(だめだろ俺!こんなおいしすぎなシチュエーションにたえられるのか俺!)」



エリンがどんどんレッドにしがみついてくるのと、布団を使う分しか置いてないのとでレッドはエリンを強く抱きしめて上から布団をかぶった。


「エリン、まだ寒いか?苦しいのか?」


「だ、大丈夫・・・。」


そう呟いたエリンはその後、徐々に寝息をたてはじめた。

レッドは眠っているエリンの顔をのぞきこんで軽く、唇にキスをした。


(クリーブは何度こんな夜を過ごしたんだろう?
俺が行ったときが限界だったはずだ。
そういう俺だって、こんな日が続いたらどうなってしまうだろう。

かわいい顔して罪作りなヤツ。安心しきって眠りやがってぇーーーこんなに俺にしがみついて。
どうなったって知らないからなっ。知らないから・・・


だけど・・・俺の名前を呼んでくれたんだよな。あのとき。)
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