同居人は女社長
エリンは新作デザインを次々に発表、商品化し、レッドたち営業スタッフも連日大忙しだった。


「これじゃ、ガオンティル社にいたときよりもはるかに超過勤務だな。」


「あれ、兄さんはもう弱音を吐いてるのか?ダメだなぁ。」


「ラング・・・ほんとに俺はときどきおまえのそのタフさに感心するよ。」


「そりゃ、天職だと思ってるからね。
僕はエリンの考える商品がとっても好きなんだよ。

食器もそうだし、ノートとかハンカチにしてもさ・・・すごくあったみがあると思う。
リエッタと仕事のことでやりとりしてとくにそう思ったよ。」


「おまえ、リエッタとそんなに親密に?」


「あのねぇ、やり返すために仕事をもちかけていただけだよ。
そのとき思ったけど、リエッタはもう自分で考えることをやめていたよ。

相手に命令ばかりを押し付けて、本来自分が好きなものであるはずのかわいいものを集めることはどうでもよくなっていたみたい。

逆に自分でかわいいものを創造するタイプのデザイナーや販売元をつぶすことばかり考えてたよ。
明らかに病んでいたね。」



「そっか、我がまま放題に暮らしていたリエッタにとってご両親が亡くなって、事業を継いだってとこまではエリンと同じだが、自分のカラーをつけられなかったんだな。」


「そうだね・・・だけど、そろそろエリンもきついかもしれないな。」


「どういうことだ?」


「兄さんは知らないだろうけど、エリンだって魔法のランプを持ってるわけじゃなくて、ネタに行き詰ることだってあるんだよ。

前回だってずっと部屋にこもりきりだった。
こもったからってどうしようもないんだけどね・・・それに僕たち社員じゃどうしてあげることもできなくてさ。」



「で、どうなったんだ?
俺が家に帰ってからそんなそぶりはなかったみたいなのに。」



「あたりまえさ、兄さんが彼女のストレスをとってあげたんだから!」


「はぁ???」


「逃げ場所でもあった我が家に、いきなり男臭い男がやってきて偉そうにとうさんや母さんに我がままいってただろ?」


「おいおい、まさか、その嫌なヤツのおかげで商品スランプがなくなったとかいうんじゃないだろなぁ。」



「正解!それだよ。
それに、エリンにとって兄さんみたいな傲慢な専制君主相手にしなきゃいけなくなったことは、まず身を守ることから入ったんじゃないかなぁ。」



「人を野獣みたいにいうなよ!」


「あはははは、ごめん。
だってさ、僕は彼女のためにさっさと家を出て近所に住むようにしたのに、兄さんはぜんぜん気にせず、クリセラやナナミアと同じように舟遊びに連れて行く始末だっただろ。

さすがとしか言えないよ。」
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