同居人は女社長
エリン誘拐の話はクリーブのところにも連絡が届いていた。


「おそらく・・・ハルビィの仕業だな。
僕を監視してるヤツらの服装や、あいつの最近の動向からして、エリンを隠している。」


「ハルビィって何者なんだ?」


「おいおい、レッド。
君はそんなに落ち着きのない男だったかな?

暴れん坊で気が短い傾向なのは知ってるが、今の君はエリンを取り返しに来たあのときより余裕がないな。」



「それは・・・黒づくめの男たちにさらわれたのと、ハンクがボロボロにされてたのを見て・・・。
エリンがもしかして・・・俺の知らない男にひどいめにあってるんじゃないかと。」


「生きた心地がしない・・・って顔だな。
気持ちは僕もわかるが、今となってはまず、命が無事で連れ戻すことだけを考えるしかない。

それに居場所がハルビィのところだったとしたら、男たちの被害はないと思われる。」


「どういうことだ?」



「ハルビィは26才の女だからな。
といっても離婚歴はあるが・・・。」


「エリンと同じくらいの年の女か?」



「それと、うちのスタッフの報告によると、リエッタが事業を全面縮小した後にハルビィがハンクに接触している。
そして、表向きハンクの会社に仕事を断られて周りを探っていたようだな。
ああ、ハルビィはリエッタの従妹だからな。」


「くそっ、そんなつながりがあったのか。
なんという女どもだ!」


「女どもだけじゃない、マグナリーク家の人間は我がままで先祖の財産で好き放題暮らしてきたが、仲間でない人間には犯罪まがいなことをして困らせる風潮がある。

僕の母さんもリエッタの家で家政婦をしていて、あの男に・・・。」


「あんちゃんのお母さんたしか・・・そっか、リエッタの親父が君の・・・」


「ああ。カロンドは母の姓だ・・・。
僕は私生児として、学費だけはマグナリークの父親から出してもらえたが、あの家に入ることはなかった。

父親はあくまで母を欲望のみで手に入れたといった。
だが、父親が亡くなってから、じつはそれがリエッタの母親を傷つけないための方便だったとわかった。

リエッタの母はわかっていたみたいで、夫の愛情は少なかったと僕に手紙をよこしてきた。
そのときに、父の日記帳もね・・・。」


「そっか・・・それであんちゃんはリエッタも完全にたたきつぶしはしなかったんだな。」


「すまないな。我がままな血筋なのはわかってるんだが、あの両親の娘であるリエッタもいろいろ悩んでいたんじゃないかと思ったから・・・。
けど、僕の親戚のせいで・・・エリンと君たちには申し訳ないことばかりで。」



「あんちゃんが謝ることはないよ。俺はエリンが無事なら、無事にもどればそれでいいんだ。」
< 57 / 65 >

この作品をシェア

pagetop