同居人は女社長
レッドをベッドで寝かせてから、エリンはダイニングを片付けながら、レッドの母に尋ねた。


「私、何かまちがったことを言ったんでしょうか?
お父様をあんなに怒らせてしまったのは私のせいなんでしょう?」


「違うわよ。エリンが心を病む必要なんてぜんぜんないの。
なんていうか・・・男親の愛情っていうのかしら・・・。
マルティなんて、ボロ雑巾みたいになってたから、どったことないのよ。うふふふ。」


「ぼ、ボロ雑巾みたいって・・・」


「結婚して妻を泣かせる夫になってはいけないっていいたいんじゃないかしらね。
だってお父さんったら結婚してすぐは、ほんとに貧乏で、私は泣いてばかりだったんだもの。」


「えぇ!!?お母様が?」


「そう、あなたがきてくれるまでは男の子が多い家っていうのは、何かと経費がとんでいってしまうものだったの。
もう食べるものにも困っちゃったことがあったのよ。
エリンが来てからは、私たちはあなたにどれだけ経済的に助けてもらったかわからないわ。

ほんのちょっとした運だったのにねぇ。
その運のおかげで、家庭生活がずいぶん楽になったけれど、お父さんはお父さんなりに思うところがあったんだと思うわ。」


「私が、出しゃばった真似をしたんでしょうか?」


「違うわよ。あなたを引き取ったのは偶然だし、お金目当てじゃないっていえば嘘になるかもしれないくらいうちはひどかったけど、みんなあなたと生活したいって思ったからなの。

お父さんだって、きれいなあなたを娘だっていえるのがうれしいって言ってたのよ。

その大切な大切な私たちの美人な娘が、レッドの奥さんになるっていうからちょっとね・・・。
マルティを立ち直らせてから、この家に寄りつきもしなかった息子があなたに手を出したなんて思ったら、腹がたったんでしょうね。」


「そんな・・・。それにレッドはいい息子さんなのに・・・。」


「そうね。レッドは女性にとっても優しいわ。
妹たちにも私にもたくさんつくしてくれたわ。

でも家族としてつくすのと、結婚したい女性とは違うはずよ。
レッドはずっとそのへんが気弱だったのよ。

だけど、あなたは違ったのね。
あたりまえよ、父さんと母さんの娘なのよ、そしてマリウスさんとメルディさんの大切な一人娘さんだもの。
父さんに殴られてきたのも、あなたを絶対に離さないと決めたからなんだと思うわ。

頭はあんまりよくないけど、気持ちはとても優しいの。
そんな息子をよろしくね・・・エリン。」


「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。
それと・・・お母様・・・1つお願いしてもいいですか?」


「何かしら?」


「あの・・・」
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