ある男子高校生の恋愛事情
「「………………………」」
しまった。つい本音が
「……腕疲れるから、髪おろしてもいい?」
「うん」
フワッと顔に千夏の髪がかかった
「これってあとどれくらい?」
「んーあと5分」
「意外と長いね」
長くないさ。きっとあっという間だ
千夏が去年、屋台で何をしでかしたのかは知らない
千夏が抱えていることも知らない
千夏だってオレがうなじ好きだって知らなかっただろ?
昔から知ってても、知らないことがある
別に秘密を持てってワケじゃない
ほら、そこのカップルだって
どんなに仲がいい夫婦だって
知らないことがあると思うんだ
もちろん、知りたくてモヤモヤすることもあるけど
一滴ずつ
知らないことを知っていって
思い出だとか
記憶だとかが
一滴ずつ、溜まっていって
それが溢れた時
想いが溢れた時
オレは決断するだろう
でも、まだもう少し
溜まるまでに時間がかかりそうだから
今はまだ
もう少し
このままで、いさせて欲しい
我儘かな