ある男子高校生の恋愛事情



―――なぜ、こんなことに?


声を出さずに、感情も声も押し殺すように、ただ涙が流れていた


落ち着かなければ
考えなければ







ーーー落ち着いてなんていられるか!

千夏が泣いたんだ。泣いたんだぞ?



体操で失敗しても泣かなかったヤツが
感情を押し殺してたヤツが
オレに涙を見せなかったヤツが



―泣いたんだぞ?オレの前で泣いたんだ




涙を見れたら近づけるような気がしていたのは大きな間違いだった

オレに感情を全てぶちまけてくれると思えばいいと思っていたのは大きな勘違いだった


“そんなんじゃない”


嘘つき


そんな風になりたかったくせに




怒りや照れによる一時的な感情によって飛び出した発言は

もう、取り消すことはできない



苦しい


でも、オレの苦しみは苦しみのうちには入らない

そして今この瞬間、苦しんでいる暇はない
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