ある男子高校生の恋愛事情

――

もう、すっかり空は暗い

だから自転車のライトをつけた


「“あの道”行ってね」

「はいよ」


うーん…ちょっとこれは…

「結構暗いからいつもよりスピード落とすぞ」

「えー!やだよ!!」



「我儘言わない!!」

「そこを何とかしてよー。名ドライバーでしょ?」


「ダメっ」

ここは譲れん


「チューしてあげるから」


……………………

………え?ほんとに?


じゃあ、ちょっと頑張っちゃおうかな……





………ダメダメ!!うっかり誘惑されるところだった

「安全第一!」

「ちぇー………作戦失敗かあ」



作戦!?


お、おそろしい

そんな作戦があるとは



「お前…すごいな」

「あはっ。カズくんは分かってないなあ」


なにが?



「女の子は女優だし」

そうでした…


「それに、武器もたくさん持ってるんだよ」

なんだって?


「例えば?」

「そうだなあ…上目遣いとか?」


な、なるほど



「……それじゃあ、敵うわけないじゃないか」

戦う前から負けが決まってる。完敗だ。白旗だ



「ほら、いこ」

「ん。ちゃんと捕まれよ」


「大丈夫!」


よし!思いきり地面を蹴った


風がオレたちを包む



「カズくん!」

「なに?これ以上は速くしないぞ」








「大好き!」



………………………


……もう…………


すぐに、そうやって

オレのことドキドキさせる





「よっしゃーー行くぞー!!」





なあ、千夏



オレは

ヘタレだし

気づけないし

頼りにもならないかもしれない





それでも

それでも


傍にいたいよ



いいかな?


千夏が許してくれる限り

離れたくないんだ



千夏が泣いたときは

千夏が寂しいときは

千夏が悲しいときは


傍にいたいよ



二人で一緒に

たくさん笑って


思い出だとか記憶だとかを増やしたい




いいよな?


だって、千夏だって同じだろ?


オレに傍にいて欲しいって思ってるだろ?



勘違いじゃない
間違いじゃない


確信を持って言える
自信を持って言える




オレたちは



いつまでも

ずっと

こうして



一緒にいるだろう



そして、いつの日か

同じ匂いの家に住むんだ


ーーーー絶対だぞ?




















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