ある男子高校生の恋愛事情
「…痛いか?」
「………」
「…おんぶしようか?」
「大丈夫」
でも、ちゃんと歩けてないじゃないか
グイッと千夏の腕を掴んだ
「支えるから、無理するな」
「……うん」
会話らしい会話もせずに電車に乗った
でも千夏の腕は絶対に離さなかった
離したら、どこかへ行ってしまう気がして
駅に着いて改札を降りたところで
「ちょっと待ってな」と言って自転車を取りに行った
「ほら」と言ったら首を横に振った
あ……そうか…
「ごめん」
「…“乗せない”なんて言って悪かった」
千夏は返事をしてくれなくて
これ以上の言葉が見つからなくて
どうしていいのか分からなくて
腕を掴んで無理矢理乗せた