ある男子高校生の恋愛事情
合わせていた手を降ろした
夕暮れの境内でセミの声だけが響く
千夏は下を向いたままだ
再び、抱っこして階段を下りた
ゆっくり、ゆっくり
一段ずつ確かめながら下りていこう
そうだよ
何でも一歩ずつじゃないか
なあ、千夏
だから、焦るな
オレがいつでも連れてきてあげる
どこへでも一緒に行くから
誰だって上手くいかない時もあるさ
調子が悪い時もあるさ
それを繰り返して
成長するんだ
だから安心して
捕まって欲しいんだ
階段を下りて、そのまま千夏を自転車に乗せた
自分の行動は正しかったのか?
そんなことは分からないけど
無理矢理、連れていったことは後悔していない
千夏が顔をあげて
「……ありがと」って言ったから
嬉しかった