病室の君へ
ー俊~中庭にて~ー
よし、やっとついた。
しぃ奈を下ろすと、しぃ奈が恥ずかしそうに言った。

「俊にい、今度の秋のお祭りいっしょにいこ?」

「お前の具合がよかったらな?」

と言ったらやったーと叫ばれた。
これだからガキは困る。

そういえば・・・笑美似も誘われてたんだ・・・
いいや!
俺はあんな女・・・
はぁぁぁぁ・・・
あいつは小さい頃から自分の好きな子の近くにいる子を泣かせて
楽しんでいた。
だから、あいつには友達がいない。
やはりあいつには俺しかいないのかな?

しぃ奈が俺の服の裾をつかんで泣いていた。

「どっどうした?」

「あのお姉ちゃんの事考えてるの?」

しぃ奈の目からダバダバと涙がこぼれ落ちる。
感情高ぶりすぎだろ。

「そんなことないよ?」

「しぃにはね?もう俊にいしかいないの。」

俺しか?俺は前にも誰かに言われたことあるような・・・

「しぃ、ママもパパもいないの・・・」

うん。知ってる。

「大丈夫。俺はお前を大事にする。」

何度人に大事にするという嘘をはいたことだろう。
俺は平気で嘘をついてきた。
でも正直しぃ奈はこの俺の手で守りたいと思えた。
笑美も同じだったかな?

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