精一杯の「好き」をあいつに。
先を歩く慧ちゃんの隣に小走りでいく。
振り返った慧ちゃんはそんな私を見て、笑った。
窓から入ってきたオレンジ色の光が階段を照らす。
「あのさー」
「ん?」
慧ちゃんの顔を見上げると、オレンジ色に染まっていた。
光に照らされているせいかな、なんてあまりよく気にしなかったけれど。
「俺、好きな人出来た」
目線を私から外し口元を腕で抑え、恥ずかしそうにしている慧ちゃん。
そんなこと言われたのは初めてで、思わず固まってしまう私。
足下でかたんっと、何かが落ちる音がした。
「落としたよ」
私の落とした日誌を拾い上げてくれた慧ちゃん。