僕と桜井家

天女との出会い

転居から1週間。栄養失調で息も絶え絶えになり、サンゴ礁の幻覚が見えるようになった頃。

新居の隅っこでお迎えを待つ僕を、真ん丸な目でしげしげと見つめる女が現れた。






白い肌にふわふわとした茶色い髪の少女。浅黒くごつごつしたシモベとは明らかに異なる種族だ。その柔らかで愛らしい姿は、母から聞いた、昔々一族が仕えていたという天女に似ていた。




一瞬、天国から先祖の主が直々に迎えに来たのかと思ったが、すぐに勘違いだと気付いた。彼女は天女がもつべき羽衣を纏っていなかったからだ。





彼女は僕を見てふわりと笑った。その途端、体中の血が勢いよく巡った。






恥ずかしながら、僕は彼女に一目惚れしたのである。








彼女は僕を見つめたあと、壁に貼ってあるシモベの謝罪文をじいっと見た。そしてまた僕を見る。それを何度も繰り返した。


そして、天女は神妙な顔をした。








僕をシモベをコキ使う暴君だと勘違いしたらしい。シモベも紛らわしい手紙を貼り付けたものだ。

「僕はそんな奴ではない。思慮深く堅実かつ誠実な主君だ。」

僕は、掠れた声で懸命に訴えた。








声が届いたらしい。天女は謝罪文を見ながらうんうんと頷いた。







しばらくして、ごつごつしたシモベの手で小さな箱に入れられた僕はパニックに陥り、呼吸困難に陥り気絶した。そして気が付くと僕は、新天地にいた。




彼女は僕を気に入ったらしく、僕をあの地獄の新居から救い出し、僕の種族繁栄のため、自らの家の一部を新天地として提供してくれたのだった。

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