僕と桜井家
新天地

募る恋心

彼女の家は、以前の新居と比べ物にならないくらい広かった。


僕の新天地自体は以前の新居と同じくらいの大きさだったが、1人で独占できる分、広く感じた。





「私はたまこ。今日からおまえはマサムネね。」

天女が微笑む。





どうとでも呼んでくれ。きみが望むならどんな名前でも構わない。

きみのためなら、ブラックバスの尾ではたかれて死んでも良いんだぞ。








天女の名前は、たまこと言った。以下、たまさんと呼ぶことにする。


彼女には父母と兄の3人の家族がいた。




兄は、たまさんと血の繋がりがあるのか疑わしいくらい不細工だった。これは決して血の繋がりに対する僕の嫉妬心からではない。彼は誠実さに欠けるだらしない顔つきをしていたのである。





まあ、良い。彼のことは後で存分に語ることにする。





たまさんの両親は共に遠くへ狩猟に出掛けているらしく、ほとんど家に現れることはなかった。たまさんの兄は新天地を求め、家を出たようだ。

だから家では、たまさんは僕と過ごすことが多かったと思う。



新天地へ来た当初、たまさんは、栄養失調と心の病で痩せ細った僕を世話してくれた。精神を病んでいたことを気遣ってか、癒し効果のあるミズクサという観葉植物まで置いてくれた。至れり尽くせりである。


僕は、そんな優しいたまさんをますます好きになった。
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