僕と桜井家

お兄ちゃんとの出会い

たまさんの兄との出会いは、新天地に来てから3日経った日のこと。





たまさんが友達とオキナワという珊瑚礁に囲まれた南の島へ旅に出るらしく、その間僕はたまさんの兄に預けられた。

たまさんの家と兄の家は、たまさんの歩幅でおよそ5歩というやや近い距離にあった。





たまさんが入り口をノックすると、中から「は~い。」と間延びした声がした。


たまさんが入ると、そこには布切れ一枚の男がいた。丸い葉をパタパタと振り、陰鬱な表情でこちらを見た。





これが、お兄ちゃんとの出会いだった。





「もう。お兄ちゃん。またパンツ一枚でだらしないよ。」

たまさんが顔にシワを寄せ険しい目つきをする。


「何を言う。俺の裸を見たい女はごまんといるんだぞ。妹の特権だ、ありがたく思え。」

「きもい。何でそんなんでモテるのかわかんない。」

「乳臭いおまえに俺の魅力はわからん。」

「わかんなくていい。わかったとたん何か穢れる気がする。」






僕はたまさんの味方だ。たまさんの言う通りだと思い、「ヤロウ!たまさんを穢すな!」と叫んだ。


すると、お兄ちゃんがこっちに目をやり、「なんだ。このパクパクしてる奴は。」と言った。





「マサムネ。可愛いでしょ。一昨々日に買ったの。旅行に行ってる間、エサやっといてくれない?」

「えー。明日、女の子来るのに。こんなプチゴジラがいたらムード下がるじゃん。」

口を尖らせるお兄ちゃん。全然可愛くない。





「お願い!お父さんお母さんも出張で家に居ないし、お兄ちゃんにしか頼めないの。この埋め合わせはちゃんとするから。」

「…じゃあ、今度友達のゆりちゃん、紹介して。あのコ、タイプなんだよねぇ。特に胸が…」

「…!!お兄ちゃん!!彼女いるんでしょ!?」

たまさんが目を見開いた。凄まじい形相だ。ちょっと恐い。


「あー。わかったわかった。プチゴジラでもなんでも置いてけ。」

お兄ちゃんが手をヒラヒラさせながらそっぽを向いた。


「ほんとにちゃんとエサやってよ?まだちょっと弱ってるから。餓死させたら、浮気してること、えみさんにバラすからね。えみさん、この前の県大会優勝したんだって。お兄ちゃん、きっと殺されるよ。」

「…はいはい。」






そういうわけで、僕はしばらくの間、このお兄ちゃんと同居することになった。
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