根雪
・・・先生、人の心臓って、ゆっくり止まるんだね・・・ドクン、ドクン、ドクン・・・だんだん弱々しくなって、音が小さくなって、そして・・・止まった。

心臓が止まる少し前から先生は動かなくなって、手がだんだん冷たくなって、指先も唇も黒みを帯びた紫色になった。もう三時間以上前から何も話さないし、目も開けない。手を握ろうとしたら、すぐにだらんと落ちるの。捕まえていようと思ったけど、あまりにも手が冷たくて怖くなった。

それでもね、先生の最後の音だけは聞きたかったの。あの優しい声はもう聞けないから、せめて本当の最後の音は耳に残したかった。先生はひとりぼっちだから、誰も先生が死ぬ瞬間を見てくれないと思ったから、私だけは先生の側にいようと思ったの。
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