根雪

曽我は胸が詰まるような息苦しさを感じた。わずか二十三才の娘が背負った過去が、あまりにも重かったからだ。
「あなたも辛かったですね。自分の過去
と、先生を苦しめたという後悔を、九
年も背負ってきたんですから。」
「先生に何かしてあげたかったのに、時
間が残されてなくて・・・ある日テレ
ビを見ながら先生が雪の話をしてくれ
たんです。とても懐かしそうに、北海
道の雪は東京のとは違うって、東京の
雪は重たそうに降るけど北海道の雪は
時に踊るように降るんだって、そう言
ってました。そして根雪の頃になると
、全てを包みこんで眠れとでも言うよ
うに静かになる。どうせなら雪を見な
がら静かに眠りたいって、だから私、
先生と一緒に名寄に来たんです。」
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