根雪
覚めて見る悪夢
美知は目を覚ました。最初に目に入ったのは真っ白な天井だった。それは光を弾いて眩しく見えた。目を動かすと天井には蛍光灯とカーテンレールが見えた。右を見るとカーテンと点滴のスタンドと点滴のバッグ、中には透明な液体が見えた。
目覚めてすぐから耳に入ってきていたのは心電図モニターの音。ピッピッピッピッと規則正しく、お前は生きていると教えていた。

「気がつかれましたか?」

顔を覗きこむ若い女は制服らしきものを着ているが、白衣ではなかった。ぼんやりしていた目がはっきりしてくると、その女が警官であることがわかった。女はすぐにナースコールのボタンを押し、間もなく白衣を着た男女がやってきた。医師らしい中年の男は、美知の腕を取り脈を確認した後、胸元に聴診器を当てた。

「凍傷もないようですし、もう心配ない
でしょう。衰弱もないし、点滴はこれ
で終わり、モニターも外して。」

医師は警官に話しかけ、二人で出て行った。
「気分はどう?頭痛はない?」
看護師が話しかけ、微笑みを見せた。
「ここは、どこてすか?」
「市立病院よ。あなた、凍死するとこだ
ったのよ。雪が夜のうちに止んだから
よかったけど、降り続いてたら車が埋
もれて発見が遅れてたわ。」

・・・死ねなかったんだ・・・

美知はそう思ったとたん体の力が抜け、強い絶望感に支配された。

「あの、先生は?一緒にいた人は?」
「ああ、亡くなられててね、詳しいこと
は今は言えないけど、今は何も考えな
いで、体を回復させましょ。問題があ
るならそれからね。」

・・・問題?死ねなかったのが、問題なのに・・・先生・・・私を置いて行ったの?・・・
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