根雪
「どうして、先生はあなたのせいで、ひ
とりぼっちだったんですか?」
美知の目から涙が溢れだし、言葉を続けることが出来なくなった。曽我は一旦質問を止め、立ち上がり窓の外を見た。視線は外に向けられていたが、意識だけは美知に集中していた。曽我の目には、美知はあまりにも儚げに映っていたからだ。

美知の泣き声が小さくなったのを聞き、曽我は美知の顔を見てから口を開いた。
「東京生まれだと、こんな雪、見たこと
ないでしょう?寒さも応えたでしょう
?運転も大変だったんじゃないですか
?」

美知も窓のほうを見ながら答えた。
「根雪って、言うんですよね。」
「ええ、よく知ってますね。ここまで積
もると、根っこが張ったみたいに頑固
で、春が来るまで溶けません。それは
・・島野さんから聞いたんですか?」
「先生は、根雪の頃になると、とても静
かだと、そう言ってました。雪が全て
音を全部吸いとるみたいに静かだと。
東京にいるときは車の中にいても雨や
風の音なんかよく聞こえるのに、昨日
の吹雪の中でも車の中がとても静かで
・・・不思議だった。あんなに賑やか
な町でも聞こえる音が、根雪の中だと
静かだって感じた・・・雪って本当に
音を吸いとるんだって思いました。」
< 7 / 15 >

この作品をシェア

pagetop