根雪
「そうですか、先生とは随分と心を通わ
せられたんですね。いい先生だったん
でしょうね。」
「私を救ってくれた人です」

美知は無表情のまま話し始めた。何かを込めるように、そして過去に引き戻されるように、言葉は美知の心を満たしていった。

美知は曽我と話していて、少しずつ心の中の閉塞感から解放されていくような気がしていた。穏やかで優しい声と、聞き急がず待ってくれる曽我の心遣いに、美知は素直になれそうな気がしていた。
何より今はもういない島野のことを、曽我に記憶してもらいたいと、そう思ったのだ。
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