マリの毎日
「その強さゆえに性別の壁を越えて組まされたペア……鉄壁の前衛ホウ・ヘイと、しなやかで俊敏な動きの後衛、パンサーガールの異名を持つ、ピーチ・桃よ!」


……あのヘタレに、この筋肉の壁を壊すことは不可能でしょう……


「くっ……ヨシくんたちがこの2人とあたるなんて……」

「でもヨシくんたちは男子の部でしょ!?」

「女子の部なんかじゃ敵なしなのよ。実際、去年も優勝してるわけだし」

「そっか、出場資格は十分なんだ……」

「出場資格……」


マリの一言を聞き、ルイコは考えあぐねました。


(待てよ、こいつら、確か……)


「桃!」

「なあに?」


ふりスコ美女は恐らくウィッグの金髪を片手でさらりとやりながら、余裕ぶって答えました。


「ハウオールドアーユー?」

「……えっ……」


えっ、まさかの英語? そして何このカタカナ発音。


「桃、あなた確か……私より2つ年上のはずよね?」

「くっ……」

「そうなの!? 高校生だったらこのジュニア大会には出られないんじゃ……!」


勢い込んでルイコの顔を覗き込むマリ。
ルイコは妖艶に微笑みました。妙に似合っているところが恐ろしい。


「ルイコ以外は私の年を知らないはずだったのに……たかを括るんじゃなかったわ……」

「どうしてこんなこと」

「だって……高校生になんてなりたくなかったんだもの! まだまだ私なら中学生で通ると思ったのよ!」

「さっさと出て行け! 若作り!」


ルイコ、それは酷いよ。


「どんまい(はーと)。お疲れ(はーと)」

「……きぃぃぃぃっ!」


絶叫してハンカチを噛みながら飛び出す桃。

それを目で追いつつも、どうしてよいかわからず立ち往生。そんなホウ・ヘイの大きな背中を押しつつルイコ。


「また世界大会でお会いしましょ!」


ま、口で言うだけは自由ですもんね。


そんなこんなでふりスコ美女とのっそり大男は棄権となり、ヨシワリは知らぬところで窮地を脱したのでした。
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