マリの毎日
「ルイコっ!」


インフォメーションには、店員と格闘するルイコの姿。


「なりすんのろおおっ」

「ちょっとルイコ!」


ルイコの顔は真っ赤っかです。


「この子、試食コーナーでお酒を飲んでしまったらしいんですよ……」


ぜえぜえ息の荒い店員さんは、やっとこの小さな怪獣の引き取り手が見つかったとでもいうように、ほっとため息をついて引っ込んでいきました。


「もーお……ほらっ、ルイコ、愛しのワリ君ですよっ!」


どーにでもなれ、とマリはルイコにワリをつきだしました。


「……よっ、よお……」


顔をひきつらせつつワリは微笑んで見せました。
マリとヨシは固唾を呑んで見守ります。

虚ろな目でワリを見ていたルイコでしたが……ふっと、微笑みました。
と思った瞬間。


「ちっがーーーーう!」


はい!? おもわずマリヨシワリは顔を見合わせました。

酔っ払ったルイコの行動が全く読めません。そらそーです。しらふでも何するかわかったもんじゃないのにこのひとたちは。


「これ、ワリじゃない」


ルイコは妙にきっぱりと言いました。


「いやいや。愛しの、ルイコのい・と・し・の! ワリ君ですよ!」


愛しの、を強調しながらマリ。


「そーだぞルイコ。どーしたんだよ」


さすがの(?)ヨシ君も困惑しているようです。


「あたしの好きなワリはね、こんなにかっこよくないもん! よお、なんて、爽やかに言えやしないもの!」


目に涙を溜めて叫ぶルイコ。
ぐじゅぐじゅの顔でまたもやマイクに手を伸ばし、息を吸うのを見てマリたちはとりあえずデパートを出ることにしました。

デパート、お疲れ様でした。
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