マリの毎日
「んー! 夜風が気持ちいいね」

「だな」


こんな状況においてもこのマイペースカップルというか要するに空気の読めないひとたちは呑気な会話を始めちゃいます。


「だあーかあーらあー、ワリ出してってばあー。あらしはワリが好きなのー。かまぼこより好きなの……」

「はいはい」


マリちゃんたち、しばらくは適当に流しておくことを決め込んだご様子。

ちょっと薄情ですよね。変わり者は変わり者同士、お互い庇って仲良くやっていきなさいよ。


一方ルイコはお構いなく喋り続けています。


「ちょっとおー! あらしが話してるんだからあ……ひっく、聞きなさあーいよおーっ」


ルイコに肩をつかまれ、マリはやれやれといった様子で空を見上げます。

夕陽が地平線に佇んではいるも、相当な暗さです。
住宅地に挟まれた通りには街灯が灯されていました。


「……どうしよっか。こんな時間にこんなルイコ、1人で帰すわけにはいかないし……」


ごもっともです。珍しく。
公共の利益のためにそれだけはやめてください。


「だよなあ……つーわけで、ワリ! 送ってけ! ゴー!」


何がゴーですか。ひろみですか。
ヨシ君は無責任にワリ君の肩に手をおき、ガッツポーズを作って見せました。


「お、おう……」


元気のない声で返事をするワリ君。
そらね、愛しい愛しいルイコにあんたはワリじゃないと言われれば傷つきだってしますよ。

大体なぜにあの酔っ払いはお酒に手を出したのか。そして試飲のとこの店員さんはなぜとめてくださらなかったのか。


「ちょっと! そこのあんた! あたしが送って行ってあげるから、帰るのよーっ!」

「はあ……?」


お前が送ってもらうんだよとか言ってもどうせ逆らってんじゃないわよと返されるのがオチです。
肩を落としたワリは少し学んだようで、黙ってルイコについて行きました。


「おーし! さっさと帰るわよーっ! 道どっちー!?」


一本道でルイコさんは一体どこに選択肢を見出したのでしょうね。

いつもより迫力のあるルイコさん。どことなく恐ろしい。

お酒はハタチになってからですよ。
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