恋じゃなくてもイイですか?


洗面台のシンクに手をつき、深呼吸をして、気持ちを落ち着かせようとした。


頭の中で次々と溢れて来る疑問を全てかき消して、リビングに向かう。


リビングの扉を開くと、ソファの上でくつろいでいた彼がこちらを振り向いた。


「なぁ、これから_____」


私じゃない誰かに話掛けるつもりだった彼の笑顔は、そこに立っている私を見た瞬間に凍り付いた。


「帰ってくるのは明後日じゃないのか?」


急に狼狽えたように、彼は立ち上がった。


「何でこの時間に家にいるの?仕事は?」


「何で裸なの?」


「バスルームにいる人は誰なの?」


責めるように彼に訊ねる。


リビングから奥の寝室へと続く引き戸が開いているのが見えた。


シーツの皺に散乱したベッドカバー、床には脱ぎ捨てられた服。


一気に血の気が引いていくのが解った。


「何で?」


私の匂いが染みついたこの部屋で浮気するの?



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