恋じゃなくてもイイですか?
テレビの棚には、お世辞にもカワイイとは言えない、丸々と太った猫の写真がずらりと写真立てに入って、並んでいた。
「ちょっと一息吐きましょう。コーヒー飲みますか?」
ハルニレくんの問いにうんと頷く。
「すぐ、用意するので、そこに座ってちょっと待っていてください」
そう言われて、ハルニレくんに促され、巨木のテーブルの椅子の端に腰を下ろす。ハルニレくんは食堂とひと繋ぎになっている隣の台所へと向かった。
かちゃかちゃと食器の重なる音を聞きながら、改めて食堂を見渡す。一面がガラス窓になっていて、この空間はひと際明るい。さっき見た芝の庭へと繋がっているようだ。洗濯物が気持ちよさそうに風になびいている。
食堂の壁には、「やにれ荘」の歴史が刻まれていた。まだ新しい建物を背に微笑む若い夫婦(たぶんハルニレくんのひいお爺さんとひいお婆さん?)に、ここで大学生活を送った学生たちの写真が1つ1つ丁寧に額に入れられていた。
服装や髪形に時代を感じるものの、そこに映っている人たちはみんないい笑顔で、ここでの生活がいかに楽しかったかを物語っていた。夢と希望に満ち溢れた眼差しを持った学生たちに、それを保護者のように暖かい目で見つめるハルニレくんの祖父母。
いいなぁ・・・
最後に思い切り笑ったのって、いつだろう?思い出せない位、最近は心から笑っていない気がする。
コーヒーの香ばしい匂いがして、我に返った。振り返ると、ハルニレくんがお盆の上にコーヒーカップを2つ乗せ、部屋に入ってくる所だった。
「ミルクとお砂糖は入れますか?」
「両方お願い」