恋じゃなくてもイイですか?


「食堂」と肩書きのついたリビングは広い間取りで、東向きの一面が全て窓になっている。


窓の外は庭になっていて、リビングから庭に出ることも可能で、洗濯竿もあるので、洗濯物を干すことも可能だ。


庭にはツツジの垣根があり、見事に真っ赤な花を咲かせていた。


ハルニレの視線が垣根を囲むブロック塀の隙間を見ていたので、


「あぁ、猫の方のミーちゃんね」と相槌を打った。


ハルニレは私の事を「ミーちゃん」と呼ぶ。


ちなみに私の名前は本宮奏多(もとみやかなた)。


「ミーちゃん」と掠りもしない。


「ミーちゃん」はハルニレが飼っていた茶トラの猫だった。


しかもオス。


ふらりと「やにれ荘」にやって来て、住みついたと思いきや、また旅に出て行ってしまったらしい。


それが約1カ月前のこと。


「ミーちゃん」と入れ替わりで私がここに引っ越してきたことと、髪の色が「ミーちゃん」と似ていることから、「ミーちゃんっぽいですね。ミーちゃんが人間になって僕の所に帰って来たことにします!」と宣言され、引っ越し来た日から私のあだ名は「ミーちゃん」になった。


リビングにある大型テレビの前には、ハルニレが撮影したであろう「ミーちゃん」の写真が写真立てや額に飾られているのだが、その写真を見る限り、「ミーちゃん」はふてぶてしい顔をしたデブ猫だった。


私がコレに似てるの?と初めてその写真を見た時はショックを覚えたが、今ではもう慣れた。



< 4 / 89 >

この作品をシェア

pagetop