恋じゃなくてもイイですか?
どんな格好で寝たらそんな寝癖が付くの?と思わず訊ねたくなるほど、髪の毛が片側になびいているような(例えて言うならピューと吹くジャ●ーみたいな)寝癖をつけたハルニレが食堂に現れた。
瞼をしぱしぱさせながら、黒縁メガネのフレームに手を掛ける。
「つい、無心で黙々と作ってたら、こんなに作ってしまった・・・」
20枚入りの餃子の皮、5袋分=100個
まぁ、食べきれない分は冷凍しておけばいいよね?
「一応、結芽と桐生くんにL●NEでお知らせしたんだけれど、2人共、今日は用事があるみたいで・・・」
大量生産後に届いた2人のメッセージにガッカリしたけれど、思いつきで誘っちゃったのだから仕方ない。
「何か中国のお祭りみたいですね。大学に中国人の留学生がいたんですけれど、毎年、旧正月の時期がくると家族総出で、餃子を皮から大量に作るって言ってたんです」
皮は既製品ですが・・・調子に乗って、戸棚の奥に見つけた大皿に中心から外側へ規則正しく渦巻きを描くように並べてみた。そんな大皿がテーブルの上に何枚も乗っているのだから、ハルニレは留学生の話を思い出したのかもしれなかった。
「よぉーし、では早速、焼き始めましょう」
気合いさながら、ハルニレはスウェットの袖を捲り上げた。餃子の並んだ大皿を持ち上げ、台所へと向かう。昔、寮だったことの名残で、やにれ荘の台所は一般家庭のものと比べで、広めの作りになっていた。
2つ口のガスコンロが2台並んでおいてあるし、流し台も広い。作業台まであるので、ちょっとしたお店の厨房みたいだ。
コンロの前に2人して並び、コンロに火を点ける。