恋じゃなくてもイイですか?
ハルニレも満足そうだ。
「せっかくだから、2階のベランダで食べるのはどうかな?」
「偶然。僕も今、そう提案しようと思ってました」
2人の意見が合ったので、早速食べ物の皿と、ビールの入ったビニール袋をぶら下げて、2階へと向かった。
干しっぱなしになっていた私の洗濯物を手際よく込み、畳むのは後にしようと取り込んだ洋服の入ったバスケットを部屋の前にとりあえず置いておく。
その間にハルニレがベランダの真ん中にテーブルと椅子をセットし、その上に料理皿を並べた。
お互い向かい合って席につくと、ハルニレが缶ビールを開け、グラスに注いだ。
「ビールが美味しくなる注ぎ方を試してみます」
ネットの記事で読んだというビールの注ぎ方を実践するハルニレ。初めに泡が立つ程、勢いよく注ぐのがコツらしい。
「どうぞ」
ハルニレから手渡されたグラスを受け取る。グラスも丁度いい位に冷えている。
「では、改めて、乾杯!」
チンと重なるグラスの音が響き、ビールを煽った。正直、普段缶から直接飲む味とさほど変わりはない。小さな変化を見抜くにはまだまだ修行が足りないらしい。でも・・・
丁度、夜へと変わっていくこの時間帯。橙色と群青色に交じって、だんだんと闇に飲み込まれていく空。ぽつぽつと灯りが燈っていく町並み。一日の終わりにのんびりとビールを飲みながらそんな日常の風景を眺めている。