恋じゃなくてもイイですか?


平日に溜まった仕事のストレスがゆっくりと浄化されていくのが解る。


「うん、おいしい!羽根もパリパリです」


餃子を頬張ったハルニレがいいね!と親指を突き出した。外で食べるから余計おいしいのかもしれなかった。ピクニック気分?


「いいね、たまにはこんな風にのんびり過ごす休日も」


そうですねと賛同するハルニレの笑顔を見て、ここに引っ越してきてよかったなと思った。




だんだんと辺りが夜の闇に飲み込まれ、ベランダの照明が点いた。


「ちょっと、餃子を焼いてきましょうか?」とハルニレが大皿を手に食堂へ降りていった。


だいぶ酔いが回ってきたので、私は夜風に当たり、少し酔いを醒ますことにした。椅子の上で膝を立て、背もたれに寄り掛かり、顔を上げて目を閉じた。


心地良い風がベランダを吹き抜ける。このまま眠ってしまいそうな気分になる。ハルニレのお婆さんとお爺さんは今頃、軽井沢のペンションで友人たちと夕ご飯を食べているのだろうか?


ガサガサと庭の方から音がしたのは、その時だった。空耳かと思い、立ち上がり、手すりから乗り出し、下を確認する。


街灯が照らし出す庭には、何も変化が感じられない。


何だやっぱり空耳かと思った所で、またガサガサと垣根を揺らすような物音がした。


嫌だ何?泥棒?____にしてはまだ時間が早いような気がする。周りの住宅にも灯りがともっているし、食堂にいるハルニレはこの物音に気付いているのだろうか?


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