恋じゃなくてもイイですか?


タンッ、タンッと屋根の辺りで、小石を下から投げられたような物音が2度した。固まったまま、目を凝らしていると、


タンタンタンと塗炭屋根を伝ってこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。目の前にいきなり黒い物体が過る。


「ひゃあっ!」


びっくりして思わず声を上げた。声を上げたのと同時に尻餅をついてしまった。


「シャー」と目の前の物体が低い声で唸る。


「!?」


酔いが回ってクラクラする頭で必死に目を凝らした。


「ミーちゃん?」


タイミング良く、ハルニレが餃子の乗った大皿を持って現れた。床に座り込んでいた私を見て、「大丈夫?」と声を掛ける。皿をテーブルの上に置くと、


「ミーちゃん!!」と声を張った。


「え?」初めて聞く、ハルニレの大きめの声に驚いて振り返った。


ハルニレはフラフラしながら、こちらに近寄ってくる。差し伸べた手は私ではなく、目の前の黒い物体に向かっていた。


「・・・ナーゴ」


ハルニレに抱えられると黒い物体は微かに声を上げた。



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