恋じゃなくてもイイですか?
救急箱の蓋を閉じて、立ち上がる。この救急箱は食堂の棚に常備されているのだ。
「ありがとうございます・・・えっと・・・」
救急箱を棚に仕舞う。ハルニレの声に振り向いた。
「えっと・・・ミーちゃんが帰って来たということはミーちゃんはミーちゃんじゃないワケで・・・」
ぶつぶつと独り言を発しながら、右手を顎に添え、考えている。やがて、ぱっと顔を上げると、
「奏(かな)ちゃん」
にっこりと笑った。
「あ、うん、どういたしまして・・・何か一息入れたいね、私、お茶淹れるね」
私はいそいそと台所に向かった。
奏ちゃんなんて、男の子に呼ばれたのが、小学生の時以来だったから、何だか照れてしまった。
「奏ちゃんか・・・」
そう呟くと、ピカピカに光る調理台に映ったもう1人の奏ちゃんがにっこりと笑った。