恋じゃなくてもイイですか?
「だろう?」とお爺さんは満足そうに微笑んだ。
見ているとほっこり和んでしまうような温かい笑顔は、ハルニレのそれとよく似ていた。
夕日に照らされながら、食堂の床に腰を下ろし、庭に足を伸ばし、ハルニレのお爺さんと2人、お茶を飲んでいる。
実は、私たちが普段、目にするアジサイはほとんどが海外で品種改良された外来種なんだと、お爺さんは教えてくれた。
この季節になると、街のあらゆる所で目にする鮮やかブルーのアジサイは、日本古来のものだと思っていた。
そんな豆知識をお爺さんから聞きながら、話をするまったりとした時間も好きだ。
私のお爺ちゃんとお婆ちゃんは元気かな?近い内に電話をしてみようと思う。
チリリンとベルの音がして顔を上げると、私と入れ替わりに自転車で出掛けて行ったハルニレが戻ってきたみたいだった。
一応、自転車は引っ越して来た時に自転車通勤しようと私が隣町のホームセンターで買ってきたものなのだけれど、私が使ってない時はハルニレも使えるよう、自転車の鍵は玄関に置いてあるのだ。
「あれ?どうしたんですか?2人して」
ハルニレは玄関の前に自転車を止めると、ビニール袋をぶら下げて、私たちの所に歩み寄ってきた。ビニール袋の中からいい匂いが香ってくる。思わずくんくんと匂ってしまう。
「お茶してたの。ハルニレくんは何を買ってきたの?」
「焼き鳥です。お爺さんたちの分も買ってきましたよ」
そう言って、小分けした袋をお爺さんに差し出した。