恋じゃなくてもイイですか?


ハルニレは冷凍庫から冷凍食品の焼きおにぎりを取り出した。


だし汁を作り、小振りな器の中に入れたチンした焼きおにぎりの上から注ぐ、三つ葉とあおさ、アクセントに七味唐辛子を振りかけて、お茶漬けもどきの創作料理を作った。


私が料理係を引き受けてから、ハルニレも料理を作ることに興味が湧いてきたのか、料理をする私を手伝ってくれたり、簡単な料理を自ら作るようになっていた。


だし汁と醤油の香りが食欲をそそる。


ぐぅと突然唸りを上げたお腹を押さえた。


こんな時間に食べたら、絶対太る!と空になったマグカップを軽く洗い、「じゃあ、私、寝るね」と食堂の扉に手を掛けた。


「そういえば」と突然思い出したようにハルニレは呟いた。


「桐生くんが、今度オーストラリアに行くことになったみたいです」


「えっ!?桐生くんが?」


それは初耳だと振り返り、ハルニレとテーブルを挟んで向かい合う。


「桐生くんの働く宝石店の支店がオーストラリアにあるらしくて、今度オパールを使ったデザインを担当するらしいです。研修も兼ねて暫く向こうで生活するみたいです。さっき電話で聞いたんですけどね」


「へぇ」知らなかったし、やっぱり桐生くんって凄い人なんだなと改めて感心した。


私がハルニレと住んでるの知ってるし、ハルニレが私にも伝えてくれるだろうと思っているのかもしれないな。


誰とでも仲良くなれる人懐っこい性格の桐生くんだったら、どこに行っても大丈夫な気がする。


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