恋じゃなくてもイイですか?
「それでですね、まだこの話には続きがあって___」
ハルニレは手にしていたスプーンを器の淵に乗せる。
「何?」
もったいぶっているので、思わず訊いてしまった。
「桐生くんには弟がいるのは、知ってますよね?」
「うん、一緒に暮らしてるって前に言ってたね」
桐生くんには5歳年下の弟がいる。今年から大学生になり、上京して来た。
1人暮らしの桐生くんの部屋に転がり込んできたらしく、一緒に住んでいると以前、飲み会の席で弟の話をしていたのを思い出した。
社交的な桐生くんと比べると弟は無口でおとなしく、正反対の性格だと言っていた。
「俺たちを足して2で割ったら、丁度いいし、女の子にモテるんだろうなぁ」そう笑いながら話してたことも思い出した。
「桐生くんって、イケメンだけど何か残念だもんね」と結芽が即答してあの時は大笑いしたな。
「で、何でいきなりその話?」
「実はですね、どれ位の期間を向こうで過ごすのか解らないらしくて、1年以上なのは、確からしいのですけれど。その間、思い切って今借りている部屋を解約することにしたそうなんです」
桐生くんは都心からちょっと離れた、2LDKの広い物件に住んでいた。
事情を聞けば、桐生くんも大学時代から付き合っていた彼女と社会人になってから同棲していたらしい。