恋じゃなくてもイイですか?


「僕としたら、大切な友達のお願いですし、できれば彼の希望を叶えたいと思っています。奏ちゃんは、新しい住人が増える事、どう思いますか?」


「どう思うも何も、ハルニレくんが「やにれ荘」のオーナーなんだから、ハルニレくんがそうしたいのであれば、私は喜んで賛成するよ」


ハルニレは私を見つめ、ホッとしたような笑みを見せた。


「良かったです。やにれ荘もにぎやかになりそうですね」


「うん、そうだね」と私も笑みを返す。


美味しそうな匂いを漂わせて、ズルズルとお茶漬けを啜るハルニレを後にして、これ以上は我慢の限界だと、そそくさと自分の部屋に戻った。




桐生くんの弟だって?桐生くんに似て、白タイツの似合いそうな王子様系イケメンなのかな?


まぁ、どんな容姿にしたって、あの人気者を絵に描いたような桐生くんの弟だ、いい子に違いない。


桐生くんと正反対で大人しいって言ってたけれど、人見知り屋さんかも……そしたら、ちょっとカワイイかもなぁ____とその時の私は大いなる勘違いをしていた。





引っ越しの前に、一度、桐生くんと連れだって弟が挨拶に来るとハルニレの携帯に連絡が入った。


身辺整理や転勤の手続きでバタバタしているのか、「桐生くんの門出を祝う会」もハルニレや結芽たちと計画しているのにも関わらず、なかなかみんなの都合が付かず、先延ばしになっている状態だ。



桐生くんが日本を発つのが6月末日に決定した。なので、6月中旬には弟の引っ越しを済ませたいとの事だった。


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