恋じゃなくてもイイですか?
……今、無視した?
私の存在なんて目に入っていなかったとでもいう風にそのままズボンの両ポケットに手を滑り込ませ、辺りを見渡しながら、ハルニレくんが消えて行った食堂に向かって、歩を進めていた。
桐生くんって180cm以上は身長あるし、同じ位の身長の弟からしたら157cmの私が目に入らなかったんだね?
あ、それとも超が付く程の人見知りで、話掛けられたら、照れちゃって、結果、無視しちゃうとか?
それとも逆に女の人と話すのに慣れてないのかな?男子校出身とか?
なんとかポジティブに考えを浮かべるものの、「そんな事あるかぁ!」と瞬時にツッコミを入れる。
……私、何で無視されたんだろう?
何か気に障るような事、言った?「よろしくね」としか言葉を発してないし……
もしかして、負オーラが全身から漂ってるとか?人には見えない疫病神が憑いてるとか?どんだけ幸薄いんだ____って何、色々考えてるんだ、私!
落ち着こう。
気を取り直して、もう1度、話しかけてみよう。
遥くんの背を追って、食堂へと向かう。
せっかくなのでとハルニレは、キッチンの戸棚から普段は使っていない来客用のティーセットを取り出した。
コーヒーを淹れ直し、おぼんの上にソーサーとカップをセッティングする。
遥くんは食堂に入るなり、きょろきょろと辺りを見渡し始めた。