恋じゃなくてもイイですか?
April*赤いピンヒール


春は新しい始まりの季節だ。


新しい制服に身を包む新入生に、それがスーツになった新社会人。


桜並木に降り注ぐ暖かい春の日差しは、生きる喜びを祝福してくれているかのようだ。


私は春が好きだ。


凍えそうな冬の寒さを乗り切り、やっと新しい芽が顔を出す。


ひらひらと舞い落ちる桜の花びらのシャワーの下、並木道を通って家へと急ぐ。


片手に引いた小さいトランクに、お土産の入った紙袋は地元の銘菓のロゴ入りだ。


「友達の結婚式?へぇ、地元で?奏多(かなた)、正月も忙しくて実家帰ってなかっただろ?久しぶりなんだから、ゆっくり休暇使って休んで来いよ」


そう言って、送り出してくれたのは、同棲中の彼だ。


優しくて、いつも私を包んでくれる3歳年上の大好きな彼。


出会ったのは大学時代に始めた居酒屋のバイト。


彼はバイト先の先輩だった。


みんなと仲が良くて、率先して仕事を引き受けてくれる頼もしい先輩だと始めは思っていたのだけれど、飲み会や親睦会で触れ合う機会が増えてくると、徐々に気になる存在になっていった。


告白は先輩の方からだった。


先輩も同じ気持ちでいてくれたことがただただ嬉しくて、私たちの関係はその日から「バイト先の先輩と後輩」から、「彼氏と彼女」になった。

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