Mein Schatz

ここから


「お母さん、私もう一度入院するよ」


電話で香織はこう言った。

母は驚きを隠せなかった。


「どうしたの?前はあんなに嫌がっていたじゃない」

「たしかに前は嫌だったよ。でも治したいと思ったんだ」

「そっか、なら病院に連絡するね」

「うん。」




数日後、香織は母と病院に訪れた。

前に通っていた所から心機一転して新しい病院に紹介状をもらって転院した。


トントン、ガチャ



「失礼します。」


「木下さんの主治医になりました。加賀見(かがみ)です」


香織はドキッとした。


背はあまり高くないが角ばった指、細い腕、すべすべの肌。

年は若くないが優しそうな雰囲気が印象的だった。

(わっなんかカッコいい…)

不覚にもまたドキッとした。


香織が同意書を書いていると、

「香織さんって言うんやー」

なんて微笑んで言うもんだから先生の顔をガン見してしまった。

「俺の顔、なんかついとるか?」

「いっいえ///」

香織の心臓はバクバクと音をたてていた。

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