Mein Schatz
診察室を後にする彼女の後ろ姿が淋しそうだった。
(もうちょっと気のきいた反応をしたかったぁ…)
5分前に戻してほしい───
─夕方
俺が病院から出ようとすると、山下さんが
「木下さんが病室の壁壊したって聞いたんですけど…。」
え…?
俺は白衣を羽織り治して、診察室に向かった。
「どうしてこんなことしたん?」
少し感情的になってしまった。
すると、彼女が考えていたことポツリポツリと話してくれた。
仲の良い患者さんは前を向いているのに自分にはなんの明確な目標がないことに劣等感があったらしく…
多かれ少なかれ俺のさっきの対応にも非はあった。
(ごめんな…)
「だからってこんなことしていいわけないやろ?」
「うん。」
「自分のしたことよく考えて。」
同情心はあえて見せてはいけない。ますます塩対応になる…。
それにここで同情してしまったら彼女のためではなくなるかもしれないからだ。