Mein Schatz
カランカラン
「よぉ」
「お待たせ!」
「あっあのさぁ…」
「なに?どうしたの?別れたいって?」
「いや、そうじゃなくて…」
「うん」
「唯、俺と結婚しよ?」
「え…?」
「だっだから結婚しよ?俺が唯を幸せにするよ。」
(ごめんな、香織…)
「ううん、あたしじゃないでしょ?」
「え?」
「直樹がほんとに好きなのはあたしじゃないでしょ?」
「え…?」
「直樹の心にはあたしの知らない誰かがいるでしょ?だから直樹はその人を忘れるためにあたしとの結婚を望んだんだよね?」
「どうして…?」
「あたしは最初から今まで直樹しか見てないからわかったよ?直樹のことがほんとに大好きだから直樹があたしをどう思ってるかも…」
唯の目には涙が溜まっていた。
──唯にはわかってたんだな。
「唯…」
「謝らないで。あたしは一回でも直樹があたしと結婚することを考えてくれたことで十分嬉しいからさ。あたしは直樹が謝ることより前向いて歩いてほしいんだ。」
「うん…唯にはわかってたんだな。」
「女の勘は甘く見ないでよー?」
そうとわかってしまった以上は…
「直樹、今までありがとう。さよなら。」
と言って唯は店を出ていった。
(俺は香織を想っていていいのだろうか…)