私って、きれい?
お面を取った恵子の口は耳まで裂けており、歯茎がむき出しになっている。
恵子は口裂け女だったのだ。
「……あの話は本当だったんだな」
「ええ、そうよ。あの人に好かれたくて、きれいだって言われたくて口を裂いたの」
恵子の言い方がきつくなる。
あのときの恨みの籠った低い女の人の声。
「憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い!!!あの人が!!!あの人に似ているあんたも!!!」
殺気立った目で恵子は僕を睨む。
「だから、あなたには私が見えて他の人には見えていないのよ。……ねぇ、私って、きれい?」
もう一度あの質問を僕に問う。
僕はその問いに「……きれいだよ」と答えた。