黒薔薇~美しき欲望~
「っ、や、やめ…、」
立つことさえ必死な男が、自分を殴り続ける女に制止の声を上げる。
「ハハッ!何?あたしが誰か分かって言ってんの?」
しかし女は拳を止めることなく笑い続ける。
その拳は真っ赤に染まっていて、見るだけでも痛々しい。
また男の顔の方は原型を既に留めておらず、未だ立っていることが不思議なぐらいだ。
もちろん、先ほどの女の問に答える余裕なんてその男にあるはずがない。
ただ一方的に殴られているだけ。
そして女は最後に、
「あーあ。つまんない」
と、そう告げて男に蹴りを入れた。