黒薔薇~美しき欲望~
あたしの上にぐったりとのしかかった男の頭を撫でる。
でも、あたしたちの間に愛はない。
あるとしたらビジネス。
愛のないセックスをするだけ。
相手はあたしを抱くことができ、その代償にあたしは贈り物をもらう。
別にこの男だけがビジネス対象じゃない。
広く言えばこのクラブに集まる男全員が対象だ。
行為の後の荒い呼吸が響く中でも、かすかに聞こえる外の音。
今日は軽く男が100人は集まってると思う。
その中からあたしは一人選んで、相手をする。
その日の気分によって気になる男を数人二階まで呼びつけ、そこで贈り物をもらう。
その時に男があたしに何を言うかも結構大事で、今日の相手もその言葉に少しだけ引かれて選んだ。
贈り物は様々で普通はアクセサリーが多いけど、中にはマンションをくれたり、車をくれたりする人も少なくはない。
でもいつかは薔薇一本もらっただけだけと、マンションを用意した男を蹴って薔薇の男を選んだこともあった。
あれはとても印象的だった。
男の顔は忘れたけど、差し出された薔薇は薔薇でも黒薔薇で。
花言葉は“あくまでもあなたは私のもの”という意味だそうだ。