たゆたうたたか。


「そ....そんなこと言ったって、だまされない、から....」


目を逸らさないって決めたのに。
楓くんの真っ直ぐな視線が痛くて、目を背ける。なんて弱い決心。


「じゃあもっと分かりやすく教えてあげましょうか?誰にでもあんなことしないよ、俺。付き合ってもいないのにキスしたのもさく姉が初めて。
さく姉のことが気になるし、触れたいなって思う。これって遊びとかじゃなくて恋だと思うんですけど、どうですかね? 」


「い、いきなりそんなこと言われても....っ!」


楓くんがあまりにも真剣に話すから。
鼓動はどんどん早く波を打つ。止まらない。


「....さく姉。」


「わっ、だめ、近寄らない....で」


息が、乱れる。
何もかも、どんどん楓くんに持っていかれる。


そしてとても近くまで。
....甘い香りがする。


私の唇に人差し指を当てて、微笑む。
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