たゆたうたたか。
....いや、でもやっぱり駄目!
瞬間、蓮の優しい笑顔と言葉を思い出す。
「っ、やっ、やめてっ」
正気に戻り、すぐに楓くんを押し返す。
すると両腕をあっけなく片手で掴まれて固定される。
凄い力。か弱そうに見えるのに。
「....少し黙って?」
「あ....ご、ごめんなさい」
あれ?私、どうして謝ってるの?
なんだろ。もう、わけわかんない....。
乱暴な態度にも何故か鼓動は鳴り止まない。
それどころか、次第にどんどんと音を立てるスピードは増すばかりで。
「ありがと、さく姉。だいすき。」
あ、笑った。楓くん、笑ってくれた....。
自分でもこれがいけないことだって。
おかしなことだって分かってはいたんだけれど。
楓くんの前だと何にも考えられなくなってた。
大切な蓮のことを裏切っている罪悪感すら、もうすっかりと忘れていた。
そのまま、目を閉じて。
私はココアの香りをまた味わった。
あぁ。私はまた、後悔をするのだろう。
そしてきっとまた、同じことを繰り返すのだろう。